【レポート】
キャラメルボックスの2011年第一弾となる『夏への扉』が、3月5日(土)よりル テアトル銀座で東京公演の幕を開けた。原作は1956年に発表されたロバート・A・ハインラインによる古典SFの名作。26年前の劇団創立時に脚本・演出の成井豊が“こんな芝居がやりたい!”と劇団員全員に必読させたというエピソードが物語る通り、まさにキャラメルボックスの“原点”とも言える作品だ。昨年、25周年というひとつの節目を迎えた彼らが、この“原点”を世界で初めて舞台化し、新たなスタートの口火を切る。
舞台は1970年のアメリカ。主人公のダニエルは親友と会社を設立し、“ハイヤードガール”という全自動お掃除ロボットの開発に成功。だが、婚約者と親友に裏切られ、大切な会社もロボットも奪われてしまう。残されたのは愛猫のピートだけ。彼は二人と戦う決意をするが、逆に捕らえられピートとも離ればなれ。挙げ句、冷凍睡眠で30年後の西暦2000年に送られてしまう。何もかも失ってしまったダニエルは、人生を取り戻すべく起死回生の作戦に打って出る。
時間を超えて繰り広げられる壮大なSF冒険活劇を、ほとんどノーカットで舞台化。普通にやれば3時間は優に超える内容を130分前後におさめているが、よくあるダイジェスト的なものに収まらず、入り組んだ伏線や情報を整理して原作のエッセンスを最大限に抽出・再構成することで、濃密で純度の高い物語にリビルド。それ故の目まぐるしい展開ではあるが、原作を未読でもしっかり理解できるところまで落とし込んだ脚色は、前述の純度の高さが成せる職人技だ。原作ファンは“あの六週間戦争が始まる少し前の冬、わが雄猫、護民官ペトロニウスとぼくは、コネチカット州の農場にある古い家で暮らしていた”で始まる冒頭から鳥肌が立つに違いない。
所謂タイムトラベルものの名作として語られることの多い本作だが、物語のテーマは“どんなに絶望的な状況に陥っても決して諦めないこと”。未来に飛ばされたダニエルは、財産も失い、西暦2000年の技術にはまるでついて行けない“ポンコツエンジニア”だ。唯一の心の拠り所だったピートさえも失った彼は、そこで諦めずに30年前へと繋がる糸を必死に手繰り寄せる。すでに半世紀以上前の作品ではあるが、今現在も支持する人が後を耐えないのは、ダニエルの揺らぎない信念に多くの人が励まされるからだろう。同じように、劇団旗揚げ以来、諦めずに自らの手で未来を切り拓いて来たキャラメルボックスだからこそ、この物語を舞台化出来たのだろうし、半世紀経っても全く色褪せない“魂”を吹き込むことが出来たのだろう。映像ではここまで色鮮やかな『夏への扉』は絶対に観れないと断言してもいい。これは絶対に“生”で体験するべき作品だ。
■東京公演
2011年3月5日(土)~27日(日)
ル テアトル銀座 by PARCO
料金〈全席指定・税込〉 6,500円
※BOX席(バディチケット) 10,000円 (キャラメルボックスの電話のみで取り扱い)
photograph:伊東和則
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